檸檬

梶井基次郎 「檸檬」原文より

何かが私を追いたてる。そして街から街へ、先に言ったような裏通りを歩いたり、駄菓子屋の前で立ち留まったり、乾物屋の乾蝦や棒鱈や湯葉を眺めたり、とうとう私は二条の方へ寺町を下り、そこの果物屋で足を留めた。
・・・いったい私はあの檸檬が好きだ。レモンエロウの絵具をチューブから搾り出して固めたようなあの単純な色も、それからあの丈の詰まった紡錘形の恰好も。――結局私はそれを一つだけ買うことにした。

主人公が檸檬を買い求めた「八百卯」は2009年の秋まで営業を続けていたが、ついに閉店してしまった。舞台になった書店「丸善」も2005年に閉店したが、昨年10年ぶりに復活したらしい。