sim 水上 勉 「五番町夕霧楼」原文より
「西陣京極のある千本中立売から、西へ約一丁ばかり市電通りを北野天神に向かって入った地点から南へ下る、三間幅ほどしかない通りである。この通りは丸太町まで千本と並行してのびているが、南北に通じるこの通りを中心にして、東西に入りこむ通りを含めて、凡そ二百軒からなる家々は軒なみ妓楼だった・・・」


貧しさゆえに五番町に売られ娼妓となった夕子と、同郷の幼なじみの学生僧、正順との悲恋物語。その美貌から五番町でも一二を争う娼妓となった夕子だったが・・・

正順は仏の道への幻滅と怒りから寺に放火し、留置場で自殺する。肺病を患い病院で療養中であった夕子は、事件を知りひとり故郷に戻って正順の後を追って自らの命を絶った。